Blog / 謎の手稿

きっかけは、ちょっと調べたいことがあって、
とあるネット怪談を検索したことでした。
その時に比較的上の方にヒットして、閲覧したブログの内容は──
正直、当時の自分が望んでいたものではありませんでした。

いわゆるキュレーションサイトの類のもので、
又聞きのさらに又聞きみたいな情報を切り貼りしているだけのものでした。

途中で明らかにウィキペディアの記事をコピペしていたり、
所々にスクロールを稼ぐためだけのフリー画像が貼られていたり。

だから、できる限りこのサイトには訪れないようにしよう、
と思っていたのですが──

そういうサイトほどやたらと上の方に表示されているもので、
他の調べ物をしているときにも度々そのサイトを閲覧してしまうことがありました。
そんな中で、少し気になることに気付いたのです。

それは、当該ブログの中で度々コピペされているであろう文献についての疑問でした。
例えば、文中で常体を用い、かつ[1]といった附番の表現が見られるものは、恐らくウィキペディアからのコピペであることが想像できます。現に「くねくね」の項における一部の文章は、同名のウィキペディア記事からの引用であることが判明しています。

中には[要出典]や[誰によって?]などの記述すらそのまま残されているものも見つかったため、このブログの執筆者がそうした外部サイトから内容を碌に参照せず引用していたのはほぼ確実でしょう。コピペされていた文章のところはあからさまに文体が変わるため、それが他者の執筆物であることは容易に分かりました。

しかし、他者の執筆物であることが分かっても、それが具体的にどこからのコピペなのかが全く分からない文章が、度々見つかったのです。

その文章には一定の特徴が見受けられました。元の文体が口語体を用いているのに対して、その個所においては屡々文語的な言い回しが用いられ、かつ脚注として1や2のような表現がなされています。

なお、これはウィキペディア由来の脚注にも言えることですが、本来はその番号によって参照されるはずの注釈はペーストされていませんでした。

この説話において投稿者(はすみ)は「遠くの方で太鼓を鳴らすような音とそれに混じって鈴のような音」が聞こえる15との発言を残している。古来の伝承に於いて、子供などが神隠しに遭ってしまった場合には村人が鉦や太鼓を鳴らして捜索したと云われており16、ここには一種の「神隠し」の説話的なモチーフの緩やかな連関が見受けられる。敢えてこの説話の世界観に則って説明を試みるならば、この時点で「はすみ」は「異界に隠された存在」ではなく、「異界のものに捜索される存在」へと変貌してしまった。
「異界のものに捜索される」ことは、その人がつねにすでに「異界」に属しうる存在であることを意味する。「はすみ」は恐らくその瞬間、異界を在処とする存在に変わってしまったのであろう。

前掲のブログにおいてはこの部分などが該当しますが、私はここで引用されている考察文の書き手が気になったのです。
記述がやたら詳細で、聞いたことのあまりない独自考察も多く、ここでコピペされている元の文章がどこにあるのか、私は純粋に興味を持ちました。

そこで、すべてが終わったあとで、これらの文章をそのままコピペして検索ボックスに打ち込むなどして元サイトを探したのですが──もう既に削除されてしまったのか、どれだけ検索しても、それらしいサイトは見つからなかったのです。

コピペによる文体の齟齬も考慮されていないサイトなのですから、書籍媒体の文献を自ら調べて打ち込むことは考えにくいです(だとすれば、脚注の書式がそのまま引用されていることの説明がつきません)。
検索結果の表層に引っ掛かるWEBサイトから引用するのが関の山なはずで、そのためコピペ元も検索すればすぐに見つかるだろうと踏んでいたのですが、結局それらしいサイトを発見することは最後まで叶いませんでした。

ブラウザやOS、言い回しに検索文の区切り方を変えるなどして色々と試してみたのですが、結果は同じでした。

そのうち、何かをコピペしているであろうブログにおける「その文章」の占める割合が、日に日に多くなっていきました。最後の方になると、もはや一瞬サイトのデータを乗っ取られたのかと思うくらいに。

更に、ある時期から──具体的な日時は判然としませんが──コピペ元の在所はおろか、「そのコピペ元が何を考察し解説しているのか」すらわからない記事が作られていったのです。わかるのは、それが文語的な解説文を模した何かであるということだけでした。

こちらは、私が魚拓をとっていたものの中では、最後の記事の抜粋です。
ログが残っているものの中では最後というだけであって、この執筆者が更新したものの中で一番最後の記事ではないという点にご注意ください。

当該ブログがこういった類の文体へと変貌していく過程で、いつの間にか必ず付加されるようになっていた一文。
「いつもご依頼ありがとうございます」という、その文言を見たときに。

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彼は──特に引用元の内容に疑念を抱かず解説ブログの更新をしていた誰かは──
コピペの過程で、自らの文章に辿り着くことを企図した誰かに「引っ掛かってしまった」のではないか、という疑念を抱いてしまいました。