Experiments / 幽霊を見る実験

実験の最終的な目標:

意図的に、かつ再現性のある形で、心霊体験を発生させること

そのための暫定的な実験フロー:

実験1. 人間の霊感を呼び覚ます
実験2. 霊感によって知覚できる霊現象の限界を特定する
実験3. [凍結]


【実験 1】

実験目的:
人間の霊感を呼び覚ます

実験概要:
幾つかの知覚に能動的なアプローチを行い、
彼らが受動的に心霊体験ができる状態を作り出す

備考:
ここでは高野(1998)の実験同様、
「幽霊に関する認識の閾値」という意味で「霊感」という言葉を用いる。

説明:
人間の霊感を呼び覚ますに至る過程を、暫定的に3つの段階に分類した。

①人間に「幽霊」の概念を理解させる
②それを恐怖の対象として紐付ける
③その対象となる感覚を意図的に拡げていく

さしあたって①と②を遂行するために、 何らかの現象・感覚に対する恐怖感を「幽霊」によるものだと認識させる必要がある。 そのため、まずは「幽霊は怖いものである」という感覚を刷り込むための実験を行った。


【実験ログ抜粋】

実験番号: 004
対象: ██ ██
方法: ヘッドホンを装着した状態の実験対象者を室内に固定し、休憩を挟みながら動画の視聴を促す。通常はヒーリングミュージックや自然映像を組み合わせた長回しの音声であるが、無作為の間隔で、非常に強い不快感を促す周波数の音が数秒程度挟み込まれる。 このとき、極小の針を用いた小規模な痛覚刺激が、音声の挿入と同時に与えられる。なお今後は、こうした不快感の条件付けを行うためのアプローチを、「恐怖刺激」と総称して表記 する。

備考:
██ ██は、東京都の████通りの路上にて、実験対象者として雇用された。

経過:
総計330分の実験(休憩時間は含まない)を行い、合計で18回の恐怖刺激を与えた。 休憩中には、先ほど聞いたものが「幽霊」の影響を受けた音声である旨の説明および暗示が複数回行われた。

結果:
対象者は呼吸の乱れや発汗など、軽度のストレス反応を示した。 また、特別な音声処理などを施していない幾つかの環境音をスピーカーで出力した際、対象者は軽い動悸および動揺の兆候を示した。

実験番号: 005
対象: ███ ██
方法: ヘッドホンを装着し、目隠しをした状態の実験対象者を室内に固定し、休憩を挟みながら動画の視聴を促す。004と同様の方法で恐怖刺激を与えるが、上述の実験よりも与えられる痛覚刺激は増大している。

備考: ███ ██は、東京都の██公園にて、実験対象者として雇用された。

経過:
総計1380分の実験(休憩時間は含まない)を行い、合計で122回の恐怖刺激を与えた。休憩中には、004と同様の説明および暗示と、必要に応じた輸血および外傷の治療が行われた。

結果: 実験に用いたヒーリングミュージックをスピーカーで出力した際、対象者は流涙とともに激しい呼吸の乱れを示したほか、強い吐き気を訴えた。

実験番号: 006
対象: ███ ██(005の実験対象と同一)
方法: ヘッドホンを装着し、目隠しをした状態の実験対象者を室内に固定し、動画の視聴を促す。004と同様の方法で恐怖刺激を与えるが、上述の実験よりも与えられる痛覚刺激は増大している。

備考: 対象者は本実験の数日前に実験の途中棄権を申し出ており、任意のカウンセリングののち続行の意志を確認した。

経過:
総計4320分の実験(休憩時間は設けない)を行い、合計で327回の恐怖刺激を与えた。休憩中には、004と同様の説明および暗示と、必要に応じた輸血および外傷の治療が行われた。

結果: 対象者は流涙とともに激しい呼吸の乱れを示したほか、強い幻肢痛を訴えた。

実験番号: 008
対象: ██ ██
方法: ヘッドホンを装着した状態の実験対象者を室内に固定し、休憩を挟みながら動画の視聴を促す。与えられる痛覚刺激は005の終盤に行われたものと同様である。 通常はヒーリングミュージックや自然映像を組み合わせた長回しの動画であるが、無作為の間隔で、後掲の人物写真と不快音が恐怖刺激として数秒程度挟み込まれる。

備考: ██ ██は、神奈川県の███駅連絡通路にて、実験対象者として雇用された。

経過:
総計560分の実験(休憩時間は含まない)を行い、合計で33回の恐怖刺激を与えた。

結果:
たとえ不快音を流していない時であっても、実験に用いた「幽霊」の画像を示した際、対象者は激しい不安感を訴え、手首および足の震えと動悸を示した。
恐怖刺激の条件付けが成功したものと思われる。


実験を「③その対象となる感覚を意図的に拡げていく」に少しずつ移行させる目的で、過去の実験対象者などを対象として、形態を変更しての実験を行った。


実験番号: 013
対象: ██ ██
方法: 前回の実験と同様の環境を再現し、実験対象者を室内に固定。目隠しやヘッドホンは用いず、不定期に映し出される複数枚の画像の閲覧を促す。また、時間経過とともに提示される画像を少しずつ変更していった。

備考:
実験対象者は、実験番号008で雇用された人物と同一である。

経過:
前回の実験と同様の環境を再現し、固定した実験対象者に対して複数枚の画像を示した。時間経過とともに提示される画像を少しずつ変更していった。また、瞑目によって画像の閲覧を拒否する状態が長時間続いた場合、008と同様かそれ以上の痛覚刺激を与えることで対処した。

結果:
以下に、実験中に提示した画像の抜粋と、それに対する対象者の反応を列記する。


反応: 動悸、吐き気、流涙


反応: 動悸、吐き気


反応: 動悸、流涙、発汗


反応: 発汗、長時間の瞑目(痛覚刺激D4により対処)


反応: 軽い痙攣、喃語による発声を伴う動悸


反応: 軽い痙攣、喃語による発声を伴う動悸


反応: 軽い痙攣、喃語による発声を伴う動悸


以上の実験により、ごく単純な線形の集合であっても「幽霊」と認識し著しく恐怖するほど、強い霊感を植え付けることに成功した。
実験を「③その対象となる感覚を意図的に拡げていく」に少しずつ移行させる目的で、過去の実験対象者などを対象として、形態を変更しての実験を行った。


【実験2】

実験目的: 霊感によって知覚できる霊現象の限界を特定する

実験概要:
実験1で十分に霊感が発現した3名を対象に、
紙に印刷した様々な図像を提示する。そこで彼らが恐怖心を示すか、また恐怖心を示した場合、 どこに「幽霊」が認められたかを筆記させる。これによって、現在の彼らが「何を、どこまで」幽霊と認識しているのかを特定する。

なお、彼らの筆跡には便宜的に色分けを行っている。
※ペンを固定している手首などの震えにより、彼らが正確に出力した輪郭線が描かれていない可能性に留意する必要がある。

【実験ログ抜粋】

図像 1: 前回の実験で提示した写真

図像 2: 何らかのモニュメントが設置された風景

図像 3: 被写体に乏しい風景

図像 5: 被写体に乏しい風景

図像 7: 単純な色と線で構成されたイラスト

図像 10: 単純な色と線で構成された模様

図像 13: 単色の画面(白)

図像 14: 単色の画面(黒)

図像 16: 複雑な図形で構成された模様

図像 25: 前回の実験で提示した写真

誰?

【通達】
実験を無期限に停止する。