Oracle / 聖地巡礼

或る時期、某写真投稿 SNS において局地的に流行したゲームがある。

位置情報ゲーム「theopneustos / テオプネウストス (略称: テネト)」。



それは、当時流行し始めていた「写真から逆算してその場所を類推する」
というシステムを用いたゲームで、
広義には地図/地理情報を用いた「位置情報ゲーム」といえる。

[※Stage04 より引用]

ある特定のアカウントから「Stage / おだい」となる写真が投稿され、
プレイヤーたる SNS のフォロワーたちは、
その写真の撮影場所を画像中のヒントから特定して同じ構図の写真を撮影する。

誰かひとりがそれと一致する構図の写真を撮影すれば
晴れてその Stage はクリアとなり、また次の Stage が開始される。
先着一名の撮影者のみが「クリア」できるという競争性や、
場合によっては他のユーザと協力して謎解きのように特定を進められる共時性、
そういった理由から特にティーンエイジャーの間で話題となっていたゲームである。
回が進むごとに回答者のフローにも先鋭化が進んできており、場合によっては
・その写真の位置情報がどこであるかを考える「考察勢」
・実際にその場所へ赴いて写真を撮影する「遠征勢」
に分かれ、 「テネト」プレイヤー同士の相互協力のもとに
ゲームが進んでいくこともあった。

「Stage06」

コメント抜粋:

「高架下?」
「後ろの方にある電線? でストリートビュー特定できないかな」
「これ近所かも! 週末に行ってみるね」
「@████ ありがとう~~~😊」

ステージクリアまでの時間: 5 日 16 時間 17 分

「Stage07」

コメント抜粋:

「標識とかもない、、、むず」
「なんか綺麗な建物とか見える、観光ホテルとか近くにありそう?」
「女性?」
「海沿いにあるホテルかな」
「関東辺りのやつな気がする」
「横浜の家系のひとがいっぱい住んでるとこ」

ステージクリアまでの時間: 5 日 4 時間 40 分

「Stage14」

(※転載者によりモザイク処理を施している)

コメント抜粋:

「あ、これは知ってる! 地元のホテルだよ 有名なとこ」
「えー、一発特定! 羨ましい……」
「近所だし今日の夕方に行ってみるね」
「これの前で撮ればいいのかな」
「テネトプレイヤーどんどん腕上がってる、、、、すごい」
「あれ、出れないかも」

ステージクリアまでの時間: 1 日 3 時間 8 分

「Stage22」

コメント抜粋:

「だいぶ田舎っぽいね」
「道の駅とかがある感じの車道かな」
「高速道路降りたとこの一般道とかこんな感じかも」
「ここ? 以下リンク」
「っていうかこれ、車で撮ってない? アングルとかも揃えないといけないのかな」
「いちお歩道もあるけどスマホ持ってるから却って危なそう……」
「助手席で撮ってみよかな 彼に頼んでみる」

ステージクリアまでの時間: 1 日 20 時間 52 分

「Stage37」

コメント抜粋:

「左腕かあ、、、左利きなんだよね自分」
「このアングル結構むずいかも」
「後ろの壁紙って青に揃えないといけないのかな」
「@█████ うちにあるカーペットと色味同じだから家来て一緒にやらん?」
「@████ ありがとう~~~~😊」

ステージクリアまでの時間: 0 日 2 時間 12 分

「Stage42」

コメント抜粋:

「熊本県の南██市」
「██事務所の跡地かな」
「林道ちょっと入ったところにあるから気を付けたほうがいいかも……」
「今夜だけど車出せるよ~」
「ライト持ってったほうがいい?」

ステージクリアまでの時間: 2 日 19 時間 27 分

「Stage50」

コメント抜粋:

「██市だね」
「██マンション 405 の壁」
「どうしよ、このアングルだとキャプチャじゃないと難しいかも」
「誰が撮る?」
「@████ こっちで動画撮るから、あとで切り抜いといていただけると……!💦」
「@██ おけです~~」

ステージクリアまでの時間: 0 日 9 時間 16 分

この「Stage50」を最後に、テネトの出題アカウントは削除された。
同時期、当該アカウントの「Stage50」の返信欄には、
・██マンションの屋上からスマホを持って飛び降りる動画
(なお、そのカメラはマンションの外壁を恐らく意図的に映している)
・その動画のうち「405 号室の窓が映っている箇所」のみをキャプチャし、
再アップロードした画像
(なお、それらを投稿しているアカウントは同一であった)
以上ふたつの投稿が確認できていた。
その後、何らかの事件性を鑑み、
当該マンションへは投稿翌日に警察が急行したものの、
動画により示唆されるような死体や侵入者の類は監視カメラにも映っていなかった。