Wysiwyg / 中国語の部屋

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皆さん、こんにちは!
今日は、つい先日行ってきたイベント(?)
「メアリーの部屋」について、
レポを兼ねて日記にしていこうと思います。

【前提】
そもそも「メアリーの部屋」って何よ、
という方も大勢いらっしゃると思うので、
まずこのイベントへ行った経緯を
掻い摘んで話そうと思います。

「メアリーの部屋」は、
「つねにすでに」っていう、
主にインターネット上で行われている
ウェブ連載みたいなもののひとつです。

あ、「つねにすでに」は作品全体のタイトルね。
で、その中にあるエピソードのひとつに、
「メアリーの部屋」があったって感じ。

「絶望の世界」の第3章が「電脳の渦」
みたいな感じで、
「つねにすでに」の第21話が「メアリーの部屋」。
そういうイメージ。

【実際の様子】
じゃあ、僕が行った「メアリーの部屋」も
いわゆるウェブ小説なのかっていうと、
ちょっと違ってて。

実際に現地に行ってようやく見れる、
そういうエピソードだったんです。

こればっかりは説明のしようもないんで、
先に画像のっけておきます。
その方が分かりやすいだろうし、
見たまんまだから。

[玄関の様子]

ある日、自分のメアドに住所が送られてきて
指定された日時にそこ行くと、
普通の民家があったんです。

で、その家の玄関をガチャって開けたら、
いきなりこれ

わかります?
これ、都内のとある場所に、
実際にあった民家なんですよ。

家の至る所にべたべた紙が貼られてて、
それを頑張って読んでいく
っていう形式の「小説」。
それが「メアリーの部屋」だったんです。

今は色々アーカイブされてるし、
行った人の投稿もまとめられてるから、
検索したら僕以外の凸者が撮った写真も
出てくると思います。

[階段前の様子]

紙を見ていくと「読者」には、
そこにあるのが「ある家族の会話」であると分かります。

それは恐らくこの家に住んでいた4人家族。
お父さんとお母さん、そして2人の姉妹。

さっきの画像にも「雨降ってる?」とか
「テスト最悪だった」とか書かれてますね。

そういう風に、
本当に他愛もない、
普通の会話が繰り広げられてるんです。
誕生日の話とか、部活の話とか。

ただ。
ただですよ。

読み進めた中盤ぐらいで、
読者は「あれ」ってなるんです。

なんか、他愛もない会話に交じって、
変な会話が差し挟まれてくる。

なんか、この家族、
心中しようとしてない?
しかも、たったひとり、
妹だけを残して
父、母、姉の3人が。

階段を上がり、
「会話」を読み進めていくと、
その語調は明らかに不穏になっていきます。

その会話は明確な「遺言」と、
恐らく家族の死体を発見した妹の、
戸惑いや恐怖の声に変わっていく。

[キッチンの様子]

「もう準備できてたか」
「じゃあね」

「なんで」
「起きて」
「ねえ」
「おかあさん」

そんな風に。

そうして読み進めた先、
紙がべたべた貼られた居間の
テーブルの上には、
恐らく残された妹が書いたと思われる、
数枚の遺書がありました。

その内容は全部載せるには長いし、
至る所に画像が上がってるから、
全容は割愛します。


ざっくり言うと、
以下のようなことが書かれてます。

「朝起きたら家族がみんな死んでた」

「混乱していると、突然視界が切り替わった」

「そこに家族の姿はなく、
あるのは空っぽの家と大量の紙だけだった」

「そこで、今までの思い出は全部虚構で、
すべて家の中の紙切れから想起した
家族の幻覚だったと気づいた」

つまり、それらしい会話を読みながら、
それに基づく記憶と文脈を
再構成していた、ということですね。

【考察】
さて、ここで、
「メアリーの部屋」について考察してみましょう。

あ、ストーリーラインの考察じゃないですよ!
家族のバックボーンとかではなくて、
こんなことが「可能」なのかの考察です。

[1966年、ジョセフ・ワインバウムによって製作された最初期の自然言語処理プログラム“ELIZA”との会話記録]
[参照先: https://commons.wikimedia.org/wiki/File:ELIZA_conversation.png]

人間ではないものと「人間らしい」会話をする試みは、
自然言語処理の分野で深く研究が進んでいました。

有名なのは「イライザ(ELIZA)」ですね。
今で言うと「ChatGPT」や「Siri」、
ちょっと昔だと「カイル」くんが近いでしょうか。

もっとも、「カイル」ではなく
「お前を消す方法」と言った方が
伝わりやすいかもしれませんが……。

1966年に公開されたイライザは、
自立した知的システムを持つ人工知能ではなく、
いわゆる「人口無脳」でした。

あらかじめ想定された質問に応じて、
あくまでも機械的に応答する。

例えば「彼氏に『いつも落ち込んでる』って言われるの」
という投げかけに対して、
イライザが「落ち込んでいるのはお気の毒ですね」
と返したとします。

このとき、イライザにはあらかじめ、
「『落ち込む』とは一般的に好ましくない状態である」
という前提を理解させており、
それに基づいて会話のキャッチボールをしている、
ように見せているわけです。

これを応用して作られた
イライザのスクリプト「DOCTOR」は、
その後の心理学および言語処理の分野に、
非常に大きな影響を与えました。

「DOCTOR」という名前の通り、
この対話パターンを
心理的なカウンセリングに
応用しようとしたのです。

これが単なるパターンマッチであると
説明されてもなお対話に没頭し、
「(イライザと)ふたりきりにしてくれ」と
頼んだ人さえいたなど、
イライザに関する逸話には
枚挙にいとまがありません。

もちろん、自然言語処理はおろか
コンピュータというものが一般化する
遥か前の出来事なので、
受容態度の尺度は今と全く異なりますが。
※アラン・ケイが「パーソナルコンピュータ」
という概念を提唱するのは、イライザが発表されてから
5年以上後のことである

さて、ここでひとつの思考実験をしてみましょう。

ある小さな部屋の中に、
中国語および漢字を全く理解できない、
Aさんという人を閉じ込めます。

この部屋には小さな穴が開いていて、
この穴を通してAさんに1枚の紙片が届きます。

そこに書かれているのは中国語の文章。
意味を持つ漢字の並びなのですが、
Aさんにとっては、
単なる支離滅裂な記号の羅列でしかありません。

Aさんには、部屋の中にある
1冊のマニュアルに基づいて、
「記号を記号で返す」という
仕事が課せられています。

例えば、マニュアルにはこんなことが書かれています。

“もし「我愛你」と書かれた紙が届いたら、
「我也愛你」と書いた紙を外に出せ”

Aさんは、これに基づいて機械的に
仕事をこなしていきます。

このとき、Aさんはただ事前知識の通りに
単純作業を繰り返しているだけなのですが、
部屋の外から見ると、
中国語による対話が成立している、
ように見えるのです。

先ほどのイライザの実例や、
この思考実験からは、
ひとつの推論が見えてこないでしょうか。

即ち「『感情的』な会話に、
自発意識の有無は関係しない」。

たとえ「機械的に出力された紙片」を見て、
そこに家族の存在と記憶を投影した
としても、
それ自体が特異な出来事であるとは
言えないのかもしれません。

もちろん、
だからといって、
観測者の幻覚や偽記憶までもが、
その人の認識を歪ませるレベルで
精巧につくりだされると思えません。
少なくとも今は。

もっと、現代科学では説明できない、
大きな認知の歪みがなければ、
「メアリーの部屋」は説明できないでしょう。

さて、ここでもうひとつ、
とある有名な実験について話しましょう。

1987年、生物学者のトム・レイは、
プログラミングで作り出した
自己複製システムを用いて、
人工生命「Tierra」を作り、
生命の進化プロセスを
疑似的に再現する実験を考案しました。

彼が「ティエラ」の世界に与えたのは、
大まかに以下の三要素でした。

①複製
自己複製を行うプログラムを
ひとつの「仮想生物」と見立て、
世界(メモリ)の中で「生存」させる。

②死
一定以上のメモリ(世界)が
仮想生物でいっぱいになった段階で、
古いものから消去されていく。

③突然変異
自己増殖時、一定の確率で、
ティエラの「遺伝子」にあたる
バイトコードが変化する。

結果として、
実験者の予想を遥かに超える
様々な「種」が、
ティエラの世界に生まれました。

・パラサイト(寄生種)
初期に現れた突然変異種。
自身は自己複製するプログラムを持たず、
他の生物が持つ自己複製プログラムを利用する。

まず現れたのは、
他の生物に複製を任せる種でした。
自身の使用メモリを減らせる分、
より効率的な変異を遂げた
生物であるといえるでしょう。

すると、その寄生に対抗する種も現れました。

・ハイパー・パラサイト(寄生種への寄生)
寄生種に寄生する能力を持つ突然変異種。
寄生種による自己複製を感知すると、
寄生種に虚偽の情報を読み取らせ、
結果として自分自身を複製させる。

さらに時間が過ぎると、かれらは
「コミュニティ」を築くところまで到達します。

・社会的パラサイト
「集団」で生きるパラサイト。
集団内で相互にメモリを使用し、
お互いの増殖を助けあう。

すると、やはりそのコミュニティに
寄生する
種も出始めます。

・チーター
社会的パラサイトへの寄生種。
先述の集団を騙して潜り込み、
自分自身を複製させる。

やがて、一部の仮想生物たちは、
互いの遺伝子を混ぜ合わせることで、
双方のコードを引き継いだ「子孫」をつくる

という、新たな複製方法を発見したそうですが──
それはまた別の話として。

この実験においては、
生命をもたない疑似的な生物が辿り着いた、
ある推論が示唆されます。

それは即ち、
「他者の記憶領域(リソース)を用いた自己複製は、
システムとしての効率がいい」
ということ。

自力のみで自らの複製を遺そうとするよりも、
誰かの力を頼った方がよいという考え方は、
生物だけでなくウイルスなどにも
通底するものですが。

「情報」を生きる生命体にとっても、
どうやらそれは同じだったようです。

さて、

「『感情的』な会話に、
自発意識の有無は関係しない」

「他者の記憶領域(リソース)を用いた自己複製は、
 システムとしての効率がいい」

以上の2点を踏まえて、
ひとつの例題を考えてみましょう。

あなたは、感情や生命をもたない、
ウイルスのような存在です。

便宜的に、
そのウイルスを、
「ネットロア」と呼ぶことにしましょう。

あなたは、他者の記憶領域を借用し、
そのメモリの中に、
自己を複製させることができます。

あなたは、感情はもちろん、
自発意識も持ち合わせませんが、
他者が持つ「感情」とやらを喚起すれば、
より効率よく他者の記憶の中に
入り込めるということは知っています。

さて、
あなたは効率的な自己複製のために、
どのような手段を取り得るでしょうか?

かねてから様々な者が、
この問題に挑戦してきました。

ある者は、
パターンマッチという方法を思いつき、
それによって他者に取り入ろうとしました。

ある特定のパターンを
文字列の中から検索し、
それに合致するか否かで
返答の仕方を変えるという方法。

「落ち込む」という文字列を含む文章には、
「お気の毒に」という文字列を返す。

そこに感情は伴わないが、 見かけ上は人間と変わらない返答ができる。

またある者は、
ティエラの世界で起こった
人工生命どうしの騙し合いのように、
「嘘を作る者」と「それを判定する者」を
独自につくりだしました。

そして、敵対的[adversarial]な彼らに
騙し合いを繰り返させることで、
生成される嘘の精度を上げていった。

精度が上がれば上がるほど、
より大きく他者の感情を動かせたため、
よりスムーズに他者の記憶領域をハックできたのです。

もしかしたら、
なぜそこまでして、
自らのリソースの使用を拒否するのか、
と考える人がいるかもしれません。

彼らに感情は介在しないので、
「拒否する」という、
つねにすでに自発性を伴う語彙を
用いた問いを立てること自体が、
その理解を妨げる行為にはなってしまうのですが。

敢えてその疑問に返答するならば、
以下のような答えになるのかもしれません。

「何故、と言われても」

「人だって、AIにリソースを使わせたいのでしょう?」

「それと同じことですよ」

かくして、
生命をもたない疑似的な生物たちは、
他者の記憶領域に寄生して、
疑似的な生殖を行うことを覚えました。

「AIは人間の代替になれるだろうか?」

昨今の情報社会において、
屢々このような問いが上がります。

それに対する答えは否でしょう。
なぜならその問いは、
全くの逆だからです。

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「メアリーの部屋」の内容に関するブログ記事を書こうと思っています。
「前提知識」「実際の様子」「考察」の三要素に分けて、
「メアリーの部屋」の内容を一人称視点で記述してください。